葉室麟 「銀漢の賦」 

イオン倉敷ショッピングモールでの買い物の合間、スタバにて、葉室麟著「銀漢の賦を一気に読む。江戸時代の小藩の幼友達3人の友情を描いた佳編。主人公の源五は風采の上がらぬ下級武士として描かれているが、実は居合いと鉄砲の達人、最後まで友情を貫く気骨をもった人物。中に、宋代の詩人蘇軾の詩が3編ほど出てくる。以下の「中秋月」は、源五から将監へ送りつけた絶縁状の結びにある。


暮雲収盡溢清寒
銀漢無聲転玉盤
此生此夜不長好
明月明年何處看


暮雲収まり尽くして清寒溢る
銀漢声無く玉盤を転ず
此の生此の夜長えに好からず
明月明年何れの処にか看ん


<注>
暮雲・・夕暮れの雲、の意。
玉盤・・月、の意。
銀漢・・天の川、の意。
不長好・いつまでも良いことが続くとは限らない、の意。

<解釈>
夕暮れにあった雲はすっかり無くなって、今は清々しい冷気が夜空に
満ちている。天上には天の川が音も無く流れ、玉のような月がめぐっ
ている。限られた我が人生の中で、こんなにも素晴らしい中秋の夜を
楽しめるのはそうそう続くものではない。この素晴らしい満月を来年
は一体どこで見るのだろうか。